レビュー:トゥルー・ストーリーズ
かつてBased on a true storyで作られたあらゆる映画は、これほどの嘘がないと思っていたので、そこには何の真実もあるはずがないと斜に構えて眺めていたものです。なんでそういう考えを持つようになったのかと言いますと、制作側の都合があるからだと思っているのです。あまりにも真実の扱われ方が嘘っぽいので、世の中には真実なんて自分の目にしかないと思っていたほどです。
もちろん、世の中の全てが理解できるほどわたしは博識でもないし、かといって全ての事象にそれなりの観察があって自分なりの意見を述べるほどの感性を持っている自負もありません。だが、ここではないどこかには真実が存在しているはずだという信念だけはなぜか心に持っているのです。
ポール・オースター(柴田元幸訳)のこのエッセイ集、『トゥルー・ストーリーズ』は、英語圏では原書が存在しないらしいです。翻訳ではあるものの、日本語しかありません。目次も本人のご希望があって、この書になったというのです。(「訳者のあとがき」参照)
オースターの書物は、これまで知らなかったし、読んだこともありません。これを切っ掛けにぜひ読みたいと思うようになりました。まず、著者の真実に対しての姿勢がこれまで自分の考えていたところを示唆してくれたからです。
お金について、これまでの自分の人生を長編エッセイ「その日暮らし」に出ている一部を引用します。お金ではないけれど、やたら親切に人を助けたがる一人の女性のことを、オースターは下記のように記してあります。他人にとってはおそらくあまり意味がないけれど、その鋭い観察に深く感銘を受けたので、あえて引用します。
p 177
善意は実によく分かるのだが、やたらと込み入った、非現実的な策略に走るせいで、自分で自分の足を引っぱってしまう。一石で何鳥も殺そうとするため、結局どの鳥も殺せない。一人救うのでも大変なのだから、一度に世界中を救おうとすれば失望を招くことにしかならないのだ。
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