159 – 夢物語の時間

幼少時代の記憶、旧正月、母のなくなったこと、自分の子どもが生まれた時と祖母がなくなった時、全ては私のために物語を紡ぎ出そうとしていた。そして私は生まれ変わった訳でもなく、ただ日々を普通にいとなんでいくのみなのだ。そんな訳で物語を紡ぎ出してみた。

分かりづらい部分もあったので、少し書き加えた。10年前に書いたものをただ懐かしさで読みふけっていた。エンジョイ!

◆夢物語

>夢の一

 夢をみた。とてもむかしのような夢だった。

 夢の部屋では、真っ赤な紙に金色で4文字が書かれている。子どもたちは、真っ暗の外で花火で遊んでいる様子である。だれが火を点けるのかと騒いでいるようだが、候補者はだれひとりとしていない。

 わたしは時計をちらっと斜めで確認し、線香をもって、「みんなどいて!」と叫び、片方の耳をふさぎながら、竿にぶら下がっている爆竹に火を点けた。パンパンパンパンパンと、赤い紙くずが瞬時に周囲を真っ赤に染めながら、ひらひらと舞い降りる。子どもたちは歓声をあげて、すごい、すごい! と云った。

 コンシーファーチャイ! 恭喜発財! みんな右手の掌で左手の甲を覆って両手を前後かるく揺すりながらお互いに祝い合った。わたしは満足げに微笑む。

 懐から用意していた赤い紙袋を取り出して、子どもたちにお年玉を配る。みんなカムシャ、カムシャ(感謝)と云ってくれた。

 と、腰までしかない身長のひとりの男の子が、転びそうになりながら早足で歩いてきて、わたしの足を抱いた。あーまー、あーまーとわたしに挨拶した。抱き上げて、来年になればこの子なら点けてくれるだろうとわたしは思った。

>夢の二

 夢をみた。同じ子だった。だいぶ大きくなったようだ。小学校の制服を着たかれは、部屋に入るやいなや、自分のベッドにもぐり込んだ。肩が震えているのが伝わる。

 わたしは、かれの背中に右手をそっと置いた。慰めるようにかるくたたいた。かれはわたしだと確かめて、やっと大きな声で泣き出した。わたしはかれをつよく抱きしめながら、この子を守らなくてはと思った。

 かれを抱っこして、リビングのほうへ行った。リビングの真ん中に、かれのお母さんが眠っている。棺の中で。しずかに安らかに。

>夢の三

 夢をみた。みんな無言のままである。

 青年がリュックサックを背負っている。目は涙ぐんでいるようだ。ずっとわたしの手を暖めるように握っていて離さない。

 日本行きの便の最終搭乗案内がアナウンスで流れた。かれは手で涙を拭いた。元気でね、とくり返してかれは云った。もう会えないかもしれないとわたしはそう感じた。

>夢の四

 夢をみた。

 なぜだかみんな騒いでいる。なにが何だかよくわからない。だれかが急に、お父さんと叫んだ。みんな1階にある部屋へと急いでいく。しばらくしてお父さんという人が部屋から出て、子どものひとりに指示して、日本に電話をさせているようだ。

 わたしは、部屋のなかをみたくてみたくてならかなった。お父さんという人が再びなかに入る時に、わたしはおそるおそるで後ろについて行った。

 みんなわたしの存在を感じていないようだ。透明なのかしらん。

 ベッドのフチにつくなり、かれは泣きだした。かれは何回もその人の呼び名を呼んだようだ。アマー、という。

 呼ばれた気がして、わたしは、ゆっくりと顔をのぞいてみる。ゆっくり、ゆっくりと。顔をのぞいたと同時に、わたしは後ろから頭を打たれた感じがして、声が出なくなった。急に呼吸もできなくなった。部屋を出て、必死に走り出した。その息苦しさがとても耐えられなかった。わたしは必死に叫ぼうとした。ベッドにいた人の顔を見てわたしはもう行かなくちゃと思った。

>夢の終わり

 走って走って、ずっと走って。といきなり猛スピードで、落下していくのがわかる。海のようだ。わたしは水を飲み込みながら、落下しつづけていった。

 どれぐらい経ったのか、やっとだれかに抱き上げられ、私は水を吐き出した。やっと声が出そうになった瞬間、私は泣き出した。

 とその時に、とても懐かしいような声が聞こえてきた。

「泣かないの、お母さんいるから」

 その声を聞いて、私はとても安心でき、眠りについた。

 *         *         *

「もしもし、兄貴、どうしたの、急に」

「どこに行ってたんだ。電話してもだれも出なくて」

「あした子どもが生まれる予定だから、病院に行ってたんだけど」

「アマーが亡くなったんだ・・・」

 *         *         *

 8月16日。子どもが生まれる前日だった。顔を上げて空を見上げた。

 夜空には、爆竹が恐くてアマーの顔を見上げて抱っこしてもらった時の、あの夜と同じような空だったように思われた。

 *         *         *

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  1. furagadou quta left a comment on 2011/11/25 at 1:59 PM

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