231 – 海に出るつもりじゃなかった

海に出るつもりじゃなかったが、出て行ってしまった。

落葉帰根という漢語があって、葉っぱが枝から離れてやがて大地に戻っていく。自然界のもっともダーウィニズムの生き方だ。

福建省では、もっとも多い苗字のひとつは、「葉」。福建語の発音はヤップとなる。

わたしの名前はヤップである。

祖父は元々中国南部の福建省出身で、当時ーー今でもそうかもしれないがーーは、船に乗って海の向こうのどこかに出稼ぎに出て行く人が多かったそうだった。

海に出るつもりじゃなかったものの、船から眺めた海は誘惑されるほど出て行きたくなるものがある。

福建省の人々はどこかに「都落ち」していても、いずれは「住めば都」となっていく。葉っぱはもっとも身軽な形で旅がらすとして生きていくのだ。唯一持っていくのは「思い」のみだ。

行ったことはないけれど、福建省というところは、山を背に目の前は海というところだそうだ。

山奥に進むよりどこか海の向こうはやはり魅力的なのではと想像する。海はそんなふうに思わせる広さは十二分以上にある。

日本海側の海辺では、季節によってはだれも植えていない花が咲くことがあるそうだ。そのルーツを調べていくと、中国南部から海に乗ってきた種のせいだということをTVで知った。

これまでどこかの杭につなぎとめていた自分を思い切り放してしまった。どこかに流されるとしても決して悪い方向には流れるまい。

そう信じてやまない。

Comments are closed.

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。